「今の年収で家を買っても大丈夫?」
「子どものために貯金はどれだけ必要?」
「年金だけで老後のお金は足りるかしら?」
このような漠然としたお金の不安を抱える人向けに、WEBでカンタンにできる無料ライフプランシミュレーションツールが増えてきました。でも、大切なお金の相談を無料ツールに任せてよいものか、お悩みの方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、ファイナンシャルプランナーとして数多くの家計を診断してきた飯村久美さんが無料ツールを検証。プロの視点で「使えるor使えない」をジャッジしてもらいます!
無料ライフプランシミュレーションツール「松井FP」を検証する
使い方はいたってシンプル。松井FPを開いたら、次の3ステップをこなすだけです。
①年齢、家族構成、年収などのパーソナル情報を入力
②それに伴うライフイベント(子育て、住宅購入等)の目安設定
③さらに必要なライフイベント(家族旅行、住宅リフォーム等)の追加
それだけで、生涯の収入と支出のバランスを診断してくれて、現在の家計のやりくりで十分or不十分がわかるようになっています。
ステップ①年齢、家族構成、年収などのパーソナル情報を入力
ではさっそく、飯村さんの元によく相談に訪れる平均的なご家族をモデルケースに、シミュレーションしてもらいます。このようなご一家です。
- 夫 35歳(会社員、年収600万円、退職年齢65歳、退職金1000万円)
- 妻 33歳(パート、年収100万円、退職年齢65歳)
- 結婚6年目、貯金額500万円
- 第一子(2歳)、第二子(2年後予定)
- お住まいは賃貸マンション(3年後マイホーム購入予定)
- 主な月間支出(家賃10万円、生活費20万円、支払保険料1.5万円)
はじめに、これらの情報を入力していきます。年収以外はチェックボックスとラジオボタンで選択していくだけなので、「すごい、サクサクいける」と飯村さんも好印象のご様子。
しいて言えば、収入の情報がおおまかすぎるかな、と思います。年齢による収入の増減は自動計算されているようですが、過去の年収や未来の想定年収について手動でも反映できると、老後の年金収入がより正確になるはずなので。ただ、そうなると手軽さはなくなってしまうので、はじめての人がざっくりシミュレーションするにはこれくらいがちょうどいいのかも。(飯村さん)
ステップ②それに伴うライフイベント(子育て、住宅購入等)の目安設定
パーソナル情報の入力が完了すると、タイムラインという画面が表示されます。
いつ結婚して、いつ子どもが生まれたのか、人生の軌跡が描かれていますね。これから先の想定しうるライフイベントが時系列で並んでいて、大変わかりやすいです。(飯村さん)
ここから、タイムライン上の各イベントの詳細を、自分の希望にあわせていく作業を行います。たとえば、「第一子誕生」のイベントをタップすると、学費・習い事・進学塾といった「教育費」についての詳細が表示されます。
デフォルトだと、高校までは公立で大学は私立、習い事はなしで、中学2年3年、高校2年3年の4年間は進学塾に通わせる、となっていますね。確かにその学年から塾に通いだす子が多いので、この標準設定はうなずけます。
一方で、日々相談を受けているわたしの感覚だと、幼少期から小学生は習い事をさせるご家庭が多い。なので、今回のシミュレーションでは、幼少期と小学校に習い事を追加します。(飯村さん)
同じように、「住宅購入」「老後の暮らし」「遺産金」といった他のイベントについても、詳細画面から自分の希望にあわせていきます。
住宅に関しては、エリアごとの平均値がわかって面白いですね。東京のマンションが約5200万円で、埼玉のマンションだと約3900万円でした。今回のシミュレーションでは埼玉のマンションを購入してみましょう。
老後の暮らしは<現在と同レベル><85%くらいの生活支出><50%くらいの生活支出>の三択ですね。これはいいですね。老後の生活費はいくら?って聞かれるより、ずっと答えやすい。
残念なのが、子どもや孫にどのくらい資産を遺したいか、という質問。<1000万円><3000万円><5000万円>の三択だけど、子どもにお金は遺さないという選択肢があってもいいですよね。仕方ないので、ここでは1000万円を選択してみます。(飯村さん)
ステップ③さらに必要なライフイベント(家族旅行、住宅リフォーム等)の追加
次に、必要なライフイベントの追加を行います。というのも、人生には他にもまとまったお金がかかるイベントがありますよね。たとえば、「家族旅行」「住宅リフォーム」などなど……これらご自身に必要なイベントを別途追加することができるのも、松井FPの良いところです。
年に一回の頻度で国内旅行をすると設定してみます。あと、リフォームですね。住宅を購入するとゆくゆくはリフォームが必要になる、その費用について気づかせてくれるのはステキです。
ただ、リフォーム費用が選べない(戸建て760万円、マンション720万円)というのは残念ですね。松竹梅ではないですが、<最低限の費用><平均費用><十分な費用>の三択から選べるともっとよかったかもしれません。(飯村さん)
ライフプランシミュレーション結果発表!
3つのステップをクリアすれば、いよいよ診断結果の発表です。
今回のシミュレーションでは、85歳の時点で2600万円の資産があるという結果になりました。「資産シミュレーション」のグラフをタップすると、年代別でどのくらいの収入・支出・貯蓄があるか予測が確認できます。
また、「ライフイベントの詳細設定」を選択すると、ライフイベントごとに自由に金額を入れ直すことができます。たとえば、先ほど1000万円で設定した「子どもや孫に遺すお金」を0円にしたいのであれば、ここで変更することができます。
あらためて人生に必要な金額を目にすると、身が引き締まる思いになりますよね。今回のシミュレーションではプラスになりましたが、評価がマイナスになるということは、家計が成り立たないことを意味します。その場合は、どの年代で資金が枯渇するかを見て、対策を考えましょう。(飯村さん)
松井FPを使ってみた感想
最後に、松井FPを検証してくれた飯村さんに、率直な感想を伺ってみました。
とても手軽でカンタンにシミュレーションができるのが魅力だと思いました。正直、私たちFPにとっても、各イベントの平均データを調べる際に役立つツールだと思ったほどです。
教育費に関して、進路別にいくらかかるのか一発で比較できたり、住居を持つときに、地域別の平均値を参照できたり、松井FPを使うことで、そのイベントに関する相場的な感覚を養えるのもよいと思います。使い続けることで、確実にマネーセンスが上がっていくと思いますね。(飯村さん)
逆に、ここはちょっと……といった不満点はどうでしょうか?
そうですね、住宅購入する場合の資金設計や、年金がいくらでシミュレーションされているかなど、大事な部分に関しては詳細が出てきません。なので、<〇〇円余裕があります>という結果だけをうのみにして大きな買い物をする際の判断材料にしてしまうのは、ちょっと危ういかな、と思います。
とはいえ、現在の家計に関心を持ったり、これから先のイベント費用の確認、方向性をざっくりとシミュレーションしたりするツールとしては本当によくできていると思います。(飯村さん)
というわけで結論。
松井FPに対するお金のプロ・飯村さんの評価は、「手軽にできて学べることも多い、結果がやや甘めに出るということを承知の上なら使う価値アリ」とのことでした。
もしあなたが将来のお金について関心を持ち始めたのなら、一度「松井FP」を使ってみてはいかがでしょうか。
今回、検証いただいたのは
ファイナンシャルプランナー・飯村久美さん
FP事務所アイプランニング代表/ファイナンシャルプランナー
金融機関在籍中にFP資格を取得。出産を機に退職後、将来の漠然としたお金の不安についてライフプランを立てて解消したことから、ファミリー世帯のマネーライフを応援したいと思いFPとして独立。2006年開業。これまでの家計診断は1000世帯。「日本の家計を元気に」をモットーに活動中。
フジテレビ「とくダネ!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」 などメディア出演多数。著書に『子どもを持ったら知っておきたいお金の話』(KADOKAWA中経出版)、『ズボラでもお金がみるみる貯まる37の方法』(アスコム)、『シングル女子の今日から始める貯蓄術』(成美堂出版)がある。